SilentSlayerに聞く、Wekids SlayerCupにかけた想い

韓国人なのに、Twitterのプロフィールは日本語。
自身と所属するクランの紹介ページは韓国語と英語がずらりと並ぶ。
ハースストーントッププレイヤーであり、現在は大学を休学しながらプレイヤー&オーガナイザー活動をしている、日本のハースストーン界隈ではちょっとした有名人であるSilentSlayer、22歳。

その行動力は見る人は見ているということがTwitterからも伺える。

その行動力はどこから湧いてくるのか?
カードゲーム、ハースストーンとの出会い、活動への想いやその素性に迫りたかった。
なぜなら、このトーナメントはただのトーナメントにしたくないからだ。
主役はゲームじゃない。
主役はそこにいる登場人物、そう人だから。
インタビューはWekidsインターン生で、韓国からの留学生、Jimmyが行った。
同じ韓国人であり、日本語を勉強しながら夢を追う同士としてインタビューさせてもらった。

インタビューワー:Jimmy@Wekids
編集:Ulara@Wekids

Jimmy
簡単に自己紹介頂けますか?

SilentSlayer
SilentSlayerです。韓国人で韓国在住です。
ぼくのゲームとの出会いは、子供の頃、ボードゲームの会社で働いているお父さんの影響で色んなボードゲームをプレイしたことでした。
その後遊戯王のカードゲームが発売され、小学生だったぼくは勝ち負けも気にならないくらいとにかく熱中しました。
皆さん知ってるかと想いますが韓国は受験戦争が本当にすごいです。
ぼくも有名な大学校に入りたい気持ちで、目的無しでただ勉強を頑張りました。
結果ソウル市立大学に入学できたのですが、正直レベルの高い講義を期待したにもかかわらず期待をかなり裏切られて絶望しました。
その後三年間、何をやりたいかも正直分からず、母の手伝いやバイト生活をしてました。
そんな時にMagic the Gatheringを知り、オフで色んな人達と本格的に「勝つ」為にプレイをはじめました。
そしてそこから、ハースストーンとの出会う事になります。

Jimmy
大会を開くことになった動機というか、そのへんの背景を教えてもらえますか?
普通に考えて、いきなり韓国と日本で国境を超えた大会開催をするなんて普通じゃないと思うんですが。。

SilentSlayer
実は、衝動的にカップ大会の開催を決めました。今考えたら無謀ですよね笑

Jimmy
もっと詳しく聞きたいです。

SilentSlayer
とにかくハースストーンって、大会が少ないんです。
だから、知名度を上げるにはいわゆる公式大会や大型大会で結果を残すしかない。
結果を残せば、他のコミュニティ大会でも招待されるようになる。
やっぱり大会主催者からしたら、ストリーム上での視聴者を増やす事が目的になるので、知名度が少しでも高い人を招待したいのは当然ですからね。
それって正しいんだけど、とにかく大会数が少ない。
ぼくも今は少し名前を知ってもらえるようになってきたけど、この立場まで辿り着く為にかなり苦労しました。
もっと大会があれば、もっとたくさんの人が挑戦する機会が増える。
そう思って、今回の大会を企画しはじめました。

Jimmy
自身の抱いた課題からの行動なんですね。
今日はSilentSlayerさんについて色々聞いていきます。
まずはこんな感じのラインナップを考えてますがどうでしょうか?
1.ハースストーンゲーマーになる事を決めた理由
2.ハースストーンゲーマーをやりながら、韓国トップクラン:Team Overloadを作ったきっかけ
3.Team Overloadが逆境を克服する為にやったこと事
4.ハースストーンの現実や今後やりたいこと
これらについて、ちょっと長くなるかもですが、聞いていけたらと思います。

SilentSlayer
はい、一つずつお話しますね。
まずは、ぼくがハースストーンのゲーマーになりたかった理由から。
まず、ぼくがハースストーンゲーマーになる事を決心する以前からHCC(HearthStone Clan ChampionShip)が開催されていました。

あの時がシーズン2でしたが、その当時に選手達のプレイ見ながら考えたのが
「ぼくもあのぐらいならできる。いや、あれよりはもっと良いプレイを見せる自信がある」
ということです。
身の程も知らずにそんな事を考えましたが、当時は本当に勝てると思ってました。
そのうち、HCCシーズン3のお知らせが出てきて、チームもない、認知度も低かった私はDCインサイド(コミュニティーサイトです)のハースストーン掲示版で、一緒に参加する人を探しました。
これがハースストーン選手としての活動の始まりでした。
そして、チームを構成してHCCシーズン3に参加したのに本当に完璧にぼろ負けしました笑
この時気づいたことが、このゲームの世界は甘く無い。
もっとシステマチックに勉強し、ちゃんと準備しないとどこでも負けちゃう、と。

Jimmy
初めての闘争心が湧いてきたって感じでしょうか。

SilentSlayerHS
そうです。絶対に勝つ、その気持ちが強くなりました。
その結果、HCCシーズン3に突貫工事で作ったチームでは「チーム」としての成功が難しいと判断し、解散しました。
そして新たに、ぼくと同じ考えだったAlpeとチーム作りました。

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Alpe 選手(photo by FOMOS)
2016年WCS韓国代表として先発

勝ちたいと思って作ったチーム。
それがTeam Overloadの始まりです。
そして、二人では選手が足りなかった為、多数の選手達を集めました。
その時入った人がik4rus選手です。

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ik4rus選手(photo by INVEN)
ハースストーンバトルロイヤル1優勝、HIT準決勝

Ik4rus選手が入って、彼により戦略的な部分を組織的にフィードバックする体制が構築され、
チーム的に一段階アップグレードしました。
映像分析の導入、戦略、ゲームの運用、デッキの構成等の議論を行い、チーム的に質が上がったと思います。
本当に色んな事を学びました。
それまでは、何も考えずにプレイして負けたゲーム数が何千ゲームあったんじゃないかなと…

Jimmy
面白いです。一つだけ質問したいです。
私は今まで、ゲーマーとして活動したことが無いから一つ理解しづらい部分があって…だって、結局ハースストーンは1対1の対戦ゲームなのに、これがチームゲームとしての戦力と関連があるのか少しよく分かりません。あんまり、ピンと来ないと言うか…

SilentSlayerHS
これは確率を考えてみたら少し理解できると思います。
例えば、韓国のトーナメントは基本5戦3先勝のルールで闘います。
このルール下だとトーナメントの第一戦ぐらいは実力が足りない人でも運で勝つことができます。
ですが、これが第二戦、三戦、どんどん進んでみると結局、上手な人の勝利確率が高くなります。
勝率の高い人でも1回勝負では負ける事もあるけど、
それが5回勝負なら、勝率の高い方が勝ち抜く確率はより高くなるので、チーム戦の大会ではより実力が成績に反映されやすくなります。

またHCCはチーム単位での大会なので1戦が終わった直後にチーム内でFeed Backができます。
お互いにOpen mind(批判などにもオープンな姿勢)で悪かったプレイや、良かったプレイを共有してFeed Backができるチームが、たとえハースが基本1対1のゲームだとしても、強いチーム、そして結果に繋がる事は明白だと思います。

Jimmy
なるほどです。ありがどうございます。

SilentSlayer
加えて、Team Overloadは韓国のどのチームよりもチーム構成員のミスを素直にアドバイスし、自分のミスを認めて進化する為に頑張るチームだと自負しています。
個々人レベルでは最強では無いかもしれませんが、チーム力としては韓国最強だと思っています。

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先日行われたGstar(東京ゲームショーの韓国版)での1シーン

Jimmy
最近の実績を見みましたが、個人戦もかなりトップクラスだと思いますが…

SilentSlayer
Che0nsuは個人としても凄い強いですね確かに(笑)
とはいえ、チームとして質の向上を狙って色んな大会(ハースストーンマスターズコリア)に挑戦しましたが、
しばらくは目に見える実績を出せないでした。
その時、HCCシーズン4が開催されます。

Jimmy
HCC3のリベンジ戦ですね。

SilentSlayer
はい、その通りです。
実際、HCCシーズン3の予選で当たったチームと予選・決勝戦であたりました。
…ちなみにその相手が当時韓国最強チーム、All Killersでした。
その時は正直、「あー本当にやばい。どうしよう?」と思いました笑
でも、一生懸命練習した自分達を信じて頑張って見よう、全力で頑張って見よう、
と思いながら予選に出ました。
そして結論になってしまいますが、血闘の末にオフ大会の予選突破が決まります。
今更、考えてみると、本当に運が良かったと思います。
その時のAll killersのメンバーがSurrender, Romanic Winter, Palm blad(2016年9月韓国代表先発戦TOP4), Seulsiho(「彼に勝利をすれば優勝」というジンクスがあります。こんな話が出るぐらい強選手)さんでした…

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HCCシーズン3、最強チーム All Killers

Jimmy
波乱を起こしたと、当時の韓国での記事を見たことあります。

SilentSlayer
そうです。
皆が当然All Killlersの勝利を予想していたのに、ぼく達がAll Killersに勝って話題になりました。
実はぼくも信じられませんでした。
怒涛の予選突破の後、本線の初試合で、自分でいうのもなんですがぼくの勝利が決定打になりチームが勝ちました。

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HCCシーズン4決勝戦、第一戦 勝利の瞬間

あの時、初めて選手としての快感を感じたと言っても過言ではありません。
当時のルールで、スコアが2対2の場合、最後の大将戦で勝利を決定するルールでした。
実際に2対2の状況があって、大将戦でぼくが出陣し、勝利することが出来ました。
とても嬉しく、今でも覚えている、たまらない瞬間でした。

Jimmy
大将戦での出戦はチームから決まったことですか?

SilentSlayer
ぼくがやりたいと言って、皆が同意してくれました。デッキの相性等も考えてみて、ぼくしか出来ないと思った上に、それをチームメイト皆も信じてくれました。
そして、結果的には信頼にこたえることが出来、勝利をもぎとることが出来ました。
ぼくの価値が証明されたような、そんな気持ちになった、そんな一戦でした。

Jimmy
凄いです。私も自分の価値が証明されるようなこと、探したいです。
さて次の質問ですが、HCCシーズン4以後に凄く有名になりましたが、
チームとしても成長したし…その後の活動を聞きたいです。
SilentSlayerはしかもTeamOverloadのリーダーも務めてますよね。

SilentSlayer
はい、リーダーをやらせてもらっています。特に何もしていませんが笑
クランとしての活動でいうと、確かに大会以後はスカウトが楽になりました。
あとは既存の有名なプレイヤーじゃない、ゲームが上手いけどチームが無くて有名じゃないプレイヤー達を、積極的に探しました。
例えば今は兵役中ですが、ランク戦の化物と呼ばれる”物理王”さん、ランク戦一位になることが習慣になった”Portia”さん等ですね。
そして、人毎のスカウト以外にも公開的に選手募集を行いました。
約、50人以上の募集者達のプレイ映像を全録画して、チームの仲間と一緒に評価してチーム員を先発した事もあります。
その時に先発した選手がFireさんとPaveanさんですね。
今回のVSLグランドファイナル大活躍した二人です。

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VSLグランドファイナル画像

このような結果を見ると、今までやってきた事が無駄じゃなかったなと、本当に感慨深いです。

Jimmy
本人はリーダーとして特にやっている事が無いと言いましたが、私から見るとSlayerさんはいいリーダーだと思います。選手を先発する時にも全画像を分析する程の熱意があったから今のTeamOverloadになったように思いますね。

SilentSlayer
ありがとうございます。

Jimmy
”目標”が無かったとおっしゃっていた大学時代の話より正直凄く面白いですね。自分が学べる事も多いし…

SilentSlayer
本当にハースストーンに出会って良かったと思います。
色んな人達とのコミュニケーションで目標設定が出来たし、チームの皆には感謝しています。

Jimmy
次ですが、改めて大会への意気込みを伺いたいです。

SilentSlayer
ちょっと冒頭と繰り返しになりますが、ぼくはとにかく選手として大会の少なさによる苦労が多かったんです。
そして、有名じゃないことによるゲームの世界って本当に厳しくて。
大会でいい成績を貰っても「あいつはただ運が良かっただけ」、
「私が好きなストリーマーに偶然勝つなんて、クズやろ!(悪いヤツだ!)」
と言われてしまいます。
既に公式大会で有名になった人以外が実力を示せる大会は本当に少ないんです。
そもそも招待されないので。
そして有名人に勝っても上記のようになってしまいます。

だから規模はまだ小さいけどWekids Slayer Cupを開催し、新人達でも実力見せられる大会を作りたいと思いました。
もし、Wekids Slayer Cupで活躍した選手たちが実力を認められ、他の大会でも活躍してくれたら、ハースストーンゲームリーグにも良い影響が戻って来ると思ってます。
それを願って、努力しています。
とにかく“Underdog”達も活躍出来る大会を開催したいんです。
※ underdog(アンダードッグ)とは、勝つ可能性の少ない方の手を指します。

これは私の夢ですが、最終的にはこのWekids Slayer Cupがハースストーンマスターズコリアや、HCC等のメージャー大会にも負けない発信力ある大会になったら良いなと思って見ます。

Jimmy
選手を目指して頑張っている人達にはいいチャンスですね。

SilentSlayerHS
2017年までに、実現出来るように頑張ります。

Jimmy
大会の開催以外にもやりたいこととかありますか?

SilentSlayer
まだ、具体的なレベルではありませんが、日本留学に行きたいです。
今、韓国の大学で勉強している専攻が経営学です。
兵役の問題を解決してから一年で大学を卒業、以後に日本の大学院に進出し、経営に対する詳細な事を勉強したいです。
その理由としてはやっぱり日本e-Sports界に興味があるからです。
日本旅行に行って出会った日本のゲーマー達の熱意と比べ、日本は環境が貧弱すぎます。
熱い気持ちを持っている人達の為に何かをやりたいと思ってます。
だから、今回開催される大会の経験は、私にとって素晴らしい武器になると思ってます。
これでぼくの話は終わりです。
面白くない話を聞いてくれてありがとうございます笑

Jimmy
いいえ、むしろSlayerさんみたいなプロの話を生で聞いて嬉しいと思います。中学校からずっとプロゲーマー達に憧れてたので…本当に楽しかったです。

SilentSlayer
ありがとうございます!
ぼくはプロゲーマーじゃないから、本物のプロゲーマーさんと比べたら全然足りないと思います。

Jimmy
韓国にはハースストーンのプロが少なのにかかわらず、今年のグランドファイナルで優勝まで出来てますよね。。凄い。
Team Overloadはプロだと思います。
長い時間、インタビューに応じてくれてありがとうございました!

SilentSlayer
はい、ありがとうございました!